4/07/2015

パプア

人生とは旅だ。

よく聞くフレーズだけど、僕にとっては人生そのものである波乗りもヨーガも旅だ。

順番を逆にして、旅とは〜〜だ。と言い変えた時、皆さんは何と言いますか?

自分へのご褒美に2年振りの海外へSURF TRIP。



greeting from the cool soldiers

行き先は、Land of Mystery “パプア ニューギニア (PNG)”

2年前の前回は、 Incredible “インディア”。

ボード担いでバックパック背負って、とりあえずエアアジアで格安チケット探したらコーチン行きだったので、そこからインド入国。

行く予定だったサーフキャンプにインドに着いてから「コーチンから明日そちらに行きたいんですけど、どうやって行けばいいですか?」って電話したらモンスーンでクローズ中、、、。って、マジスカ?、、、どうしよう、、、。どんだけ準備不足なんだ?

っていう行き当たりばったりの、それも奥様と、、、っていう珍道中。

いゃあ、今思い出せばハードだったというか、まぁよくも波乗りやらないうちのプリンセス連れて行ったなっていう、自分でも笑っちゃうくらいのトンデモナイ旅だった。




でもその計画性の無さがたたり一生忘れるのことできない旅になったのだけど。

さて、今回はパプアニューギニア政府観光庁お墨付きのプロサーファー同行ツアー。


http://pngfan.jp/surfing/


PNGサーフィン親善大使で、いつも個人的にもお世話になっている、山田弘一プロと吉川共久プロから何年も前からお誘い頂いていたのになかなか行けず、今年ようやく晴れて参加できたのだ。


at Vanimo airport

今回はツアーということで、貧乏インド旅と違って、宿も飯も交通手段も全てオーガナイズされていて、波があるかないか以外はな〜んの心配も必要ない。

考えてみればツアーで旅に行くなんて高校の修学旅行以来だ。

何より空港に着いてから目的地までの交通手段を探さなくていいこと、宿探しも必要ないこと、バックパーカーの旅でこの2つが最も苦労するところだけれど、それが段取りされているということが、こんなにも気が楽だとは想像をはるかに超えていた。チケットの手配なんかも当然必要ない。そしてその分のエネルギーを波乗りとヨーガに集中できた。


in the blight tropical green...Vanimo surf camp...photo:KO1

前半の1週間は、Vanimoというインドネシア国境近くの町からすぐの村にステイ。

ハリケーンの影響なのか毎日強風に泣かされ、残念なことに目的のライトのブレイクは一度も姿を見せてはくれなかった。


breaks around Vanimo surf camp

とは言っても、たくさんポイントがあり、風の合うブレイクに行けば日本の波情報的評価ならば80〜90点は優につく波がブレイクしている。



dangerous super shallow Yako left....  photo:Yossy

残りの1週間は、Tupiraという田舎の村にステイ。ハリケーンが遠ざかり風も弱まり毎日波乗三昧。


in the morning sun beam.... photo:Yossy

smiles that heal u....so innocent n pure....

後半うねりがピークを越えてからは、明日からサイズダウンするという予報が毎日つづき、それはてーへんだっ!なくなる前にやっとかないと!っつーことでやれる時にやれるだけ入っていたにもかかわらず、波は最終日まで続き、1日たりとも休ませてはくれなかった。


Tavulte 400m left...can't paddle back... photo:Yossy

我が波乗人生で、あそこまで身体がバキバキミシミシギッコギコ言うまでサーフィンしまくったことは思い出すことができない。人間の体も使い古したチャリのチェーンのように、油が切れた状態になるってことを知って驚いた。




旅の目的は波乗り。言うまでもない。

とはいっても、波が無ければ波乗りはできないわけだから、トリップに行っても波乗りできない可能性はとても高い。そればっかりはどうしようもない。

スーパーヨギーになって、神通力を使いこなせられればいとも簡単に波なんて起こせるだろうけれど、その前にもしスーパーヨギーであれば、「自分がいい波に乗りたいから」なんて理由でそんなことに神通力を使おうなどとはそもそも思わないだろうから、やっぱり波が無ければ雪の無いスキーヤー、山の無いクライマーと同じなのだ。波が無いその現実を受け入れるしかない。

さて、今回のPNG surf trip。幸運なことにもピッタリのタイミングでエクセレントな波に当たった。1週間早ければストーミーでダメ、遅ければ無くなった後でダメ。Tupiraは1日もズレることなくストーミーとフラットの間の1週間だった。これはただラッキーというよりは奇跡的なことが起こったに違いないと思っている。

good waves and wonderful friends at Tupira...photo:Yossy

旅というのは未知との遭遇だ。

普段の生活から抜け出して、非日常を体験することになる。

そこで日常的に体験できないことや、初めて直面する現実を目の当たりにした時に、普段夢にも思わないようなことや、今までそんなことを考えたこともなかったようなことが、頭の中に浮かんでくる。


それにどう感じてどう反応してどう捉えてどう解釈してどう納得するのか、、、。その自分の心の動きを観るのが僕は好きなのだ。

それは僕が旅をしていることを実感する瞬間のひとつ。

だからピンチになればなるほど、日常生活と距離的にも文化的にも風習的にも人種も言葉もかけ離れていればいるほど、怖い反面テンションはうなぎ登り。

まぁ今回はツアーだから、バックパッカーの旅みたいな興奮やヒヤヒヤ感はないでしょ、、、と高をくくっていた僕は、この旅が思いもよらない貴重な体験をさせてくれる旅になろうとは微塵だに想像していなかった。

気にしていたのは、波があるかないかそれだけ、、、。


電気も水道もガスも携帯もパソコンも無く、その日食べる分の魚や野菜を取って、日の出と共に起き日の入りと共に床に入る、スーパーシンプルライフ。

でも、そんな生活をしている人たちが見せる笑顔や仕草や振る舞いに、あんなに胸キュンするなんて全く心の準備をしていなかった。


もはやキュンどころではなく、ぎゅっと鷲づかみにされて締めつけられると言った方がいいかもしれない。

現地の人たちが素晴らしいとか、フレンドリーだとか、子供が可愛いとかいうのは話には聞いていたし予想もしていた。

でも、やはりその場の空気を吸って接して体験するしか伝わってこないことがある。

物質的には何の不自由もなく、逆に有り余って毎日膨大な量の家庭ゴミや粗大ゴミや産業廃棄物がそこかしこで排出され、食品廃棄物は毎年1700万トン、1日当り4万5千トンにのぼり、世界一を誇る経済大国にっぽん。

その反面、約40人に1人、合計320万人が精神病患者。さらに毎日約80人、年間3万人が自殺し、自殺率は世界で第3位。

これは明らかに精神と物質のバランスが物質に偏っていることの証明だ。

Tokyo concrete jangle
 
パプアの子供たちが見せてくれた笑顔、子供たちだけではなく大人も恥じらいながらも笑顔で話しかけてくる。

日本ではあまりお目にかからない、混じりっけのないピュアでイノセントで、何かこうハッとさせられるような笑顔だ。

お金や物や名誉や権力が、人の心を真の幸せに満たすことはできないと、みんな心のどこかで分かっているにもかかわらず、人類全体の意識が物質の方に向かっている真っ只中にいると、それを求めなければいけない、それが必要だという錯覚に陥ってしまう。

本当の金持ちを知りたければ貧乏の底の底を経験しなければいけないし、本当に満腹感を得たければ飢えを知らなければいけない。最高の快感を知るには究極の苦しみを味わなければ分からない。

だけど周りを見渡すと、そういう苦しみや辛さは避けて、より楽に便利に簡単に、をテーマに人々は右往左往しているようにしか見えない。

そしてその結果、苦労や苦痛に耐える力は衰え、さっき言った精神的に病弱な人間社会を作りだしてしまっているのではないだろうか。耐えることができない。


「Keep It Simple Stupid!!」

サーフィンフォトグラファーの巨匠、Dick Hooleさんから頂いたこの言葉。

Dickさんが、「カオル、全ては“KISS Theory”だ。無駄を省いて馬鹿げてるくらいシンプルにしろ」と何度も何度も繰り返していたこの言葉。

in front of my desk
僕の頭の片隅には常にこの言葉がある。

どうしてもあれもやった方が良い、こうした方がカッコいいとか、ついつい色々と付け足したくなって最後には膨れ上がってしまう。

そして一度付け足してしまうと、そこから削ぎ落としていくのはとても難しい。

でもシンプルなものを創り出す為にはその過程が必要なのかもしれない。

例えば、パプアはその自然のままが良い、シンプルな営みが良いと言って、ローカルの人にそれをいくら説明しても、理解してもらうのは難しいと思われる。

ほとんど人は電気のある生活の方が良いと思うだろうし、お金も車も欲しいだろうと思う。

それは、僕のような物質の溢れる世界に産まれ育って、精神的ダメージを受けて、身をもってお金や物質的なものを求めることによっては、心の安らぎは得られないという経験のプロセスを経た後に初めて、シンプルな生活の中にシャンティを見いだせると感じるようになるのかもしれない。(それが良い悪いではなくて、あくまでも僕個人の意見なので、悪しからず、、、。)

まぁ、精神性の高い目ざとい人はそんなこと経験しなくても分るだろうけど、、、。

誰も生まれてくる場所を選ぶことはできない。それは過去から延々とぶっ続けで繋がっている様々な因縁によりどうしようもない。避けることはできない。

そこには日本に生まれてきた意味がある。

ハワイやオーストラリアに移住したいとか、日本を抜け出したいとか思っても、そうなっていないということ、そうはさせてくれない何かやしがらみがあるということは、現時点での僕には何か日本でやらなければいけないこと、片付けなければいけないことがあるのだろう。

オージーやハワイアンと自分を比較して羨ましがるのではなくて、運命だからしょうがないと悲観的になるのではなくて、その現実を真っ正面から受け止めて、今自分のやるべきことをコツコツとやっていく。急がば回れ。

そこに僕の人生の最大のテーマであり、この人生の全てかけて実現させなければいけない「365日 波乗りだけ」という、究極のシンプルライフが、現実味を帯びてくるのかもしれない。もしかすると来世に持ち越しかもしれないけど、そんなことは言ってられない。みんなは笑うかもしれないけど、やるしかないのだ。


と、まあ、すごい話の飛び方をしましたが、、、ここら辺でやめときましょう、、、。

で、話しを出だしに戻すと、旅とは僕にとっては、自分を知るためのツールだなと、自然も人間もありのままのパプアから、宇宙ステーション成田空港へ戻り、帰路の電車の中で改めて思ったのでありますた。

さて次は、どんな旅が待ち受けているのでしょう。



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