8/24/2012

4.Forbidden Fruit

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4.Forbidden Fruit


 会場には1時間前からチラホラと人が集まり始めた。Dickさんは、おおきなスーツケース の中に当時の“STORM RIDERS”と“ASIAN PARADISE”の海外版オリジナルポスターやMP(Michael Peterson)のサイン入りの写真など、世界にそれしか現存していない貴重なもの、他にも日本で発売されていないDVDなどをたくさん持ってきてい た。
 
 「SCのバックナンバーはとても価値のあるものだ。世界にここにしかない。まだ日本のサーファーはその価値に気付いていない。まだ早すぎる。でも、アメ リカ、ハワイでは人々は昔のボードや雑誌、ポスターとかの価値に気付いている。ハワイでのオークションはとても盛り上がっているんだ。」と、日本に来る直 前までHAWAIIAN ISLANDS VINTAGE SURF AUCTIONのためハワイに滞在していたDickさんは教えてくれた。といって焦ることでもない。どのみち遅かれ早かれみんな気付いていくだろう。
 
 SCは、当時のサーファーにはバイブルだった。
発売日には朝から本屋に並び、夜は徹夜で何度も読み返したという。
 早めに会場に来た人達は、Dickさんの写真や、テーブルの上に並べられた当時のオリジナルパンフレットやSCのバックナンバーを手に取り、皆さん興奮 気味だ。中には当時のチケットを大切に持っている人やオリジナルTシャツを着ている人もいて、アジアン・パラダイスが当時のサーファーにとって、忘れられ ない映画であったことを伺い知ることができた。
 
 しかし、若いサーファーの姿はあまり見えない。武藤氏が「残念ですが、若い世代のサーファーはアジアン・パラダイスのことをあまり知らないんですね。で すから今日来るのはほとんど40~50代、年金サーファーたちです。」と言っていたのを思い出した。25年も経てばそれは当たり前なのかもしれない。
 
 会場には150名近いサーファーが集まり、25年振りに上映される“STORM RIDERS”と“ASIAN PARADISE”を楽しんだ。中には上映開始時間ギリギリに息を切らしながら滑り込んできたサーファーもいて、見に来た人達の熱気に場内は包み込まれて いた。

 石井さんとDickさんの対談も行われ、当時の様子や、アジアン・パラダイスを作るに至った経緯や裏話などで盛り上がった。そして最後に残したメッセージは、本気で波乗りに打ち込んできた石井さんだから言えるものだった。
 
 「サーフィンは禁じられた遊びです。武藤さんも私も60です。それでも波に乗っていこうというエネルギーがあるということは、やっぱり禁じられた遊びのおかげです。サーフィンというものの喜び。これが他の何ものにも代え難いものがあると思うんですね。我々は何のために生まれてきたのか、死んでいったらどうなるのか、というようなことを考えながらサーフィンしてると、段々その答が見つかって来るわけです。そしたら、禁じられた遊びでも、もうちょっとやってみようか、その先にまた何かある。非常にシークレットなものです。そしてそれが私たちの人生にとって、とても大事なものです。」




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